2016年03月22日

党と国家の指導者について

 「党と国家の指導者」とは一体なんなのでしょうか。説明するのには構成する人のポストについて説明する必要があって面倒な反面で、このくくりを使う場面がないからなのか、日本のメディアでは見たことないですね。

 ざっくり言えば政治局委員級以上の人たちを指すのですが、政治局委員が兼任するポストの全てが「党と国家の指導者」に当てはまるわけではありません。

 2005年4月に採択された公務員法では、公務員を10クラスに分け、最上位の2つである「正国級」(政治局常務委員相当)と「副国級」(政治局委員相当)の総称が党と国家の指導者になります。公務員法ですが共産党員や衛星党の党員も含まれます。

 共産党だと総書記、中央政治局常務委員、中央政治局委員、中央書記処書記、中央軍事委員会主席、副主席、中央紀律検査委員会書記が、国家機関だと国家主席、副主席、全国人大常務委員会委員長、副委員長、国務院総理、副総理、国務委員、全国政協主席、副主席、最高人民法院院長、最高人民検察院検察長が「党と国家の指導者」となります。兼任で重複しているのを除くと、現在68人です。

 この中でも当然序列はあって、中央書記処書記は政協副主席より格上ですから、令計画は降格。周小川やは中央委員から外れてヒラ党員にはなりましたが、「党と国家の指導者」というポストを兼任することで、人民銀行総裁や中央対外聯絡部長を務める担保としています。習近平政権になって初の試みじゃないでしょうかね。

 最近は名簿が出なくなりましたが、お葬式や旧正月恒例となっている総書記らが行う古参党員への慰問で名前が出ていたのも「党と国家の指導者」でした。中央軍事委のヒラ委員もこのタイミングで紹介されますが、もちろん「党と国家の指導者」の後になります。

 日本なら次官までは公務員で、政務官、副大臣、大臣はごく稀なケースを除いて選挙で選ばれた議員が担当しますから、彼らは公務員にはなりません。一方、中国は選挙で選ばれるわけではなく、中央政府の仕事をするからには国家主席とはいえ公務員です。

 以前、「降級についてのまとめ」で紹介したように、副部級、つまり副大臣級以上と正司庁級(局長級)以下では待遇に大きな開きがあります。副部級以上を高級幹部と呼ぶように、閣僚はやはり別格なのです。

 だがちょっと待ってほしい。正部級(正大臣級)以上についての規定がありません。正部級の上には副国級と正国級があるのですが、彼らの待遇については記載がありません。

中央、国家機関の出張時宿泊費の標準、来年1月1日から調整(人民網 2015/10/20)

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※別格というか雲上人というか

 別のソースを見てみましょう。国内出張時の出張費について通達が出ていますが、ここにも正国級と副国級に対しての記載はありません。彼らは公務員であっても公務員ではないのかもしれません。

 いつも私が書いていることですが、王毅の肩書きは外交部長(外相)で日本なら岸田外相、米国ならケリー国務長官がカウンターパートになります。しかし、国務院内には楊潔チという前外相が外交担当の国務委員として存在しています。当然王毅は彼の部下になります。

 王毅だけでなく、閣僚はいわゆる閣議に相当する国務院常務会議には参加できません。できるのは総理、副総理、国務委員と秘書長の10名前後です。秘書長は国務委員が兼任する規定なので、参加者は全員が「党と国家の指導者」になります。

 実際に政策を決めるのは別のところにしても、この扱いからすると中国の閣僚は実際には次官以下の実務者と見るのが妥当でしょう。

 余談はさておき、「党と国家の指導者」がどういったものか、おわかりになったでしょうか。

==参考消息==
http://news.xinhuanet.com/ziliao/2004-06/22/content_1540150.htm
http://www.thepaper.cn/newsDetail_forward_1270347
タグ:政治局委員
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2016年03月13日

黒龍江省長の一言でデモ発生

 3月6日、黒龍江省内最大の国有企業である、龍煤集団に関する陸昊省長の発言が発端となり、集団のお膝元で4日間に渡る大規模デモが発生。引責辞任もありえるところまできました。

 龍煤集団は黒龍江省だけではなく吉林、遼寧を含めた東北3省を含めて最大の炭鉱がある双鴨山市に本拠地を構え、その生産数は過半数ともちろん省内トップ。人口150万人の同市で24万人を雇用する企業です。

 2012年をピークに、世界規模の石炭価格が下落、集団自身の高コスト体質、さらに18万人の退職者を抱え、赤字に転落して4年目の昨年は給料の遅配が続き、国慶節用のボーナスを支払うために1億元を借り入れたとも報じられています。

 2013年の上半期の時点で17億元の損失を出しており、当時給与支払いのため省国資委に支援を求めています。それまで抱えていた教育機関や病院を手放すなど、ある程度身軽にはなっていたのですが、世界最大の炭鉱企業である中国神華の生産数の10%程度ながら、現時点での職員数は神華の21.4万人を超える22.5万人。

 2013年時点から3万人の削減は出来ていたもの、高コスト状態は解消されていませんでした。高コスト体質は、「龍煤の1万トン採掘に必要なコストは全国平均の3倍」との陸昊談話でも解消されていないことがわかります。昨年9月から林業にうまく「分流」できたものの、その数は2.5万人にとどまっています。

 国慶節を前にした9月22日、同グループは「重病のグループはまず止血をする」ため、10万人前後を分流すると発表しました。この発表は程なく削除されています。「分流」はそのまま翻訳すれば配置転換ですが、解雇だろうことは察しがつくわけで。

「龍煤集団8万人には1ヶ月の給料遅配もない」(澎湃 2016/3/6)

 といった状況下で陸昊は「工員8万人に対して、現在まで1月の収入の遅配も、1元のカットもない」と言ってしまったわけで、最低限の生活補助800元だけしかもらっていない工員は発言当日からデモへ。

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※「我々は生きなければならない、食い物がいる」

 「我々は生きなければならない、食い物がいる」「陸昊は目を開いて話を聞け」などのスローガンを手に、工員だけではなくその家族らも参加。道路や線路上に出て抗議活動を展開しています。



龍煤集団への給与未払いを黒龍江省長が認める 以前と異なる発言(黒龍江省政府網 2016/3/12)

 あばばば状態の陸昊は12日に龍煤集団問題を検討する会議を開催し、対策を講じると表明しました。前言を撤回するのも、地元で起きたデモに圧されて支援策を打ち出すのもかなり情けないですが、陸昊もこれ以上どうしようもないんだと思います。

 作業員の給料遅配は確かにある。この問題では言うことを違えた。報告に間違いがあったとしても、誤りだ。誤りは正さなければならない。正してこそ問題は解決する。
 報告が間違っていたという言い訳はしつつ、全面降伏ですね。

 今回の騒動は、政府活動報告で李克強がゾンビ企業の清算を訴えたことと無関係ではないでしょう。

 これまで、社会不安を引き起こさないように、国有企業の雇用を確保するため政府から補助金を出して支えていたわけで、李克強の「適切に処理する」発言は工員の耳には「赤字のウチも潰される」と聞こえたかもしれません。

 ただ、嘘をついた、ということで陸昊一人の責任にされてしまいそうな気もします。正確な情報が上がってこなかった、というのは言い訳にはなりませんからね。

==参考消息==
http://finance.sina.com.cn/chanjing/gsnews/20130720/000316186225.shtml
http://m.21jingji.com/article/20151010/6acec5d0e7372f77ccbabe054760ee31.html
http://www.bbc.com/zhongwen/simp/china/2016/03/160313_china_miner_protest
http://cn.rfi.fr/中国/20160313-谎称没欠薪触发千人游行后-省长改口认信息不实
http://news.mingpao.com/pns/dailynews/web_tc/article/20160313/s00013/1457805946709
http://news.jinghua.cn/806/c/201603/13/n3958027.shtml
http://www.thepaper.cn/newsDetail_forward_1443474
http://www.bjnews.com.cn/news/2016/03/12/396824.html
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2016年03月11日

【天津港爆発】詐欺ツイートの被告が控訴

 昨年8月に天津市濱海新区で起きた爆発事故にかこつけ、微博(ウェイボ)で同情を誘うツイートで10万元近い金銭を集めたことで、詐欺罪に問われていた女性の一審判決が出ました。

 事故が起きたのは8月12日の午後11時頃。阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられるなか、ネットで事故の一報を知った被告は、翌13日の午前1時から下記のツイートを投稿。

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※当時のツイート

 #天津塘沽大爆発 まじ怖い。パパが近くで仕事してて、電話したんだけど電源切れてて、会社も誰も出てくれない。家に私1人でほんと怖い。
 #天津塘沽大爆発 まだ連絡つかない。焦って仕方ない。家に1人で怖い。心配。ママが亡くなった日の夜を思い出した。パパと病院にいて、ママをずっと抱きしめてた。ずっと抱きしめてた。
 同情した微博ユーザーは「打賞」というアリペイを使った機能で、彼女にいくばくかの小銭を払い込むわけです。はてなにも投げ銭というシステムがありましたが、こちらは現金です。その額96576元(当時のレートで約190万円)。3856ものユーザーが同情したのです。

 この後、「彼と病院で最後に会った。頑張って頑張って来年はいい大学に合格するからって言ったよ」「1年前、ママも同じように病院で横たわってた。いろいろ話をしたかったのに、聞こえなかったんだよね」などとさらに哀れを誘う内容で追い討ちをかけています。

 もっとも、14日早朝に「私は嘘つきじゃない」という長文を発表していることからもわかるように、当時から疑う声も結構あったようです。

 アカウント名の「我的心属于拜仁慕尼黑always」は、「私はずっとバイエルンミュンヘンのもの」という意味。

 バイエルンミュンヘンは100年以上の伝統を持つドイツのスポーツクラブのことで、と説明する必要はないかもしれませんが、天津絡みのツイートをするまではずっとサッカーネタをツイートしていたんですね。

 ツイート直後から個人情報を特定する人肉捜索が行われ、広西チワン族自治区在住であることが特定されています。ホテル関係者でしょうか、「常住人口信息」を使って見つけたようですね。ホテルなどが身元を検索するシステムですが、こういうのがサラッとネットに出てくるあたりが怖い国です。

 逮捕が発表されたのは9月1日ですが、記事には「近日」とあるので1週間前、8月25日以降には逮捕されていたとみられます。なお、容疑者の楊彩蘭は広西チワン族自治区で逮捕されています。集まった約10万元は返却されています。

 旧正月直前の1月28日、地元の防城港市防城区法院で開かれた一審で、楊は詐欺罪で懲役3年、罰金8000元、事件に使われたサムソンの携帯1台を没収の判決が下りました。

 判決を伝える番組では「傷つけてごめんなさい」と反省の弁が述べられていましたが、まあ昨日暗記してきたなっぽい感じで、覚えているうちに一気に話してしまおうみたいな話し方でした。

 その楊が一審の判決を不服として控訴しています。控訴申立書では「詐欺罪を構成する事実がはっきりせず、証拠不足」と説明。

 また、「ネットの関心を集め、不満を晴らすため人災をネタに、善良なネットユーザーからだまし取ったのは誤りで愚かなやり方だったが、すでに誤りを認め十分後悔をしている」「自分の行為は確かに誤りだったが詐欺罪には当たらず、懲役3年はおかしい」と無罪を主張しています。

 なんで詐欺罪なのかとは思ったんですよね。デマツイートRT500回でタイーホされる例のあれがあるではないかと調べてみたら、あれは他人への誹謗中傷や暴動を煽ったりなどが対象で、今回の容疑には当てはまらないと今更知りました。罪状が騒動挑発罪なので気づくべきでしたが。

 天津大爆発は影響が大きく、同じように嘘ツイートでカネを集めた事例が複数あったのですが、本件ではカネを集める気があったのかどうかは裁判でははっきりしていなかったので、そこが焦点になりそうです。



==参考消息==
http://www.weibo.com/p/1001603875506478311281?from=page_100505_profile&wvr=6&mod=wenzhangmod
http://www.weibo.com/p/1001603875616671065161?from=page_100505_profile&wvr=6&mod=wenzhangmod
http://www.weibo.com/p/1005055261313797/home?from=page_100505&mod=TAB_
http://www.thepaper.cn/newsDetail_forward_1442226
http://www.thepaper.cn/newsDetail_forward_1420020
http://www.thepaper.cn/newsDetail_forward_1370559
http://www.thepaper.cn/newsDetail_forward_1426475
タグ:天津大爆発
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