2016年04月19日

常州市の華麗な手のひら返し

 江蘇省常州市の常州外国語学校が昨年9月に新校舎に移転してから、学生493人が皮膚炎や気管支炎などを発症していると中央メディアが報道。一部ではリンパ癌、白血病などを訴える学生も出ています。

 同校と道路を挟んだ向かいは化学工場三社の跡地三社のうち常隆化工に30年以上勤めている職員によると、作業を省略するために有毒排水を直接排出したり、廃棄物を地中に埋めていたとのこと。

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※写真下側が工場跡地かな

 中央メディアの報道で、地元常州市委、政府は調査チームを結成し、「環境汚染ゼロ容認」とどこかで聞いたようなフレーズで調査に乗り出しています。

 移転後、自分たちの子供たちに異常を認め、登下校の送り迎え時に学校周辺で刺激臭を感じた父兄は独自に調査を行い、化学物質が検出されたため、学校側に再度移転を伝えています。

 常州外国語学校は1月6日、移転を否定し、市環境保護局も「工事の過程で農薬のような匂いがする」「この匂いが周辺に影響を与えるかの判断は難しい」と父兄の不安を一蹴。さらに同校がある新北区が大気調査で問題がなかったことを発表しています。

 その後も父兄の不安は晴れることなく、1月12日から同校は休校となりました。では、中央メディアが報じるまでの常州市と常州市外国語学校の対応を見てみましょう。

父兄に告げる書(2016/2/20)

 「市、区政府と関連部門は父兄の強い要求の元」、「(向かいにある)常隆化工の修復工事を終えた」「市、区政府と関連部門の広範な保護者の要求と教育工作の尊重を体現」と、上から目線の説明が続きます。

父兄に告げる書(2016/2/26)

 26日、校内の土壌、地下水に対する環境調査の結果、問題はなかったとの見解を示しています。(調査結果


常州外国語学校の一部学生の健康診断報告、病歴問診など資料分析に関する説明(2016/3/18)

 父兄から子供が甲状腺結節、リンパ節肥大などの異常が出ているとの報告に対し、市衛生計画生育委は関連を完全否定。

一部の人間が悪意を持って環境調査結果を歪曲して散布することに関する声明(2016/4/7)

 デマです、法的責任を問うぞゴラァ。

常州外国語学校の環境調査結果に関する説明(2016/4/15)

 再度検査を行ったが問題ない。

環境汚染に対しては"ゼロ容認" 常州市政府が調査チーム結成(2016/4/18)

 4月17日,中央テレビ『新聞直播間』で「建設すべきではない学校」が報じられ、常州市委、市政府は高度に重視し、当日夜に緊急会議を招集、合同調査工作チームを結成した。教師、生徒の健康に高く責任を持ち、環境汚染に対しては「ゼロ容認」の態度で、迅速に関連工作を展開する。
 父兄が独自で行っていたのは向かいの化学工場跡地での土壌や地下水調査、学校側が行っていたのは敷地内の調査ということで、言い訳は成り立つかもしれません。建設前の環境調査がどうなっていたかが焦点になりそうです。

==参考消息==
http://www.czxd.gov.cn/html/cznd/2016/OEMALFQM_0110/214601.html
http://www.bjnews.com.cn/news/2016/04/18/400450.html
タグ:環境汚染
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2016年04月17日

中紀委が突然のゴルフ擁護

 昨年10月、「党内の法規」と位置付けられ、法より重いとされている紀律の処分条例が新たに発表されました。

 旧条例では時代に合わなくなったため12年ぶりに修正となった説明されているように、中央の政策を妄議しないこと、党内で分派活動を行わないことなどが追加されています。

 今年の1月1日から施行されるはずでしたが、発表直後からどんどん新条例が適用されていたのは、中央紀律検査委員会(中紀委)が超法規的機関だからなのでしょうか。

 中紀委の機関紙である中央紀検観察報は114ある条例の中から1つを選び、適用された事例で何が紀律違反と判断されたかを不定期に掲載しています。

党員は微信の”朋友圏”で中央の政策を妄議していいのか(中国紀検観察報 2015/12/18)
“口止料”で他人の摘発を阻止するのはどういった行為か(中国紀検観察報 2015/12/21)
“風水屋”の加護が出世を保証することはどういった紀律違反になるのか(中国紀検観察報 2015/12/24)
任命に不満があれば赴任を拒否できるのか(中国紀検観察報 2016/1/16)
個人の関連事項を隠蔽するのはいかなる行為か(中国紀検観察報 2016/1/24)
幹部の檔案偽造は信用の問題だけではない(中国紀検観察報 2016/2/3)
同郷会の組織は党紀のどこに抵触するのか(中国紀検観察報 2016/2/16)
選挙における非組織活動の結果は重い(中国紀検観察報 2016/2/17)
グリーンカードを持つかどうかは個人的な事情なのか(中国紀検観察報 2016/2/19)
学歴の不正取得を党紀は許さない(中国紀検観察報 2016/2/26)
他人を助けて金銭を受け取らなければ問題ないのか(中国紀検観察報 2016/3/19)
権力交易は権力による私利の貪りなのか(中国紀検観察報 2016/3/20)
身近な人間が”権力”を借りて利益を図ることは党員幹部には関係ないか(中国紀検観察報 2016/3/22)
子女が仕事をしないのに給料をもらっても、党員幹部が事情を知らなければ紀律違反ではないのか(中国紀検観察報 2016/3/28)
公務執行に影響しない謝礼金を受け取るのは紀律違反か(中国紀検観察報 2016/4/5)
謝礼金を受け取ることが間違いならば、謝礼することは正しいのか(中国紀検観察報 2016/4/6)
冠婚葬祭を行うにあたり、服務対象は招待できるか(中国紀検観察報 2016/4/8)
謝礼の金品を受け取れないのならば、旅行などの手配を受けることは可能か(中国紀検観察報 2016/4/11)

恐らくこれで全部かと。グリーンカードの件は興味深い事案で、党に報告がなかったために党内の職務を解任されています。

 党員や公務員のパスポートは個人のものではなく党や政府機関のものですから、それを利用して永住権を取得するのはアウトのようです。

 新条例施行前に個人的にパスポートを取得し、英国の永住権を取得したことを報告していなかった科技日報の副社長が党籍を剥奪されています。

第76条 関連規定に違反して外国の国籍もしくは永住許可証、長期の居留許可を取得した場合、党内職務を解任、党内観察、あるいは党籍を剥奪する。

 では報告してたらお咎めなしなのかと言えば、新条例には報告に関しては明確に書かれておらず、「関連規定」とあるだけなので、何が決め手なのかははっきりとはわかりません。密告されるだけ損という気もします。

 解説で紹介された事案の末路は党籍剥奪などの処分なのですが、12日に紹介された事案は少し違いました。

ゴルフをするのに悪いも何もない。カードを持っているのが間違い(中国紀検観察報 2016/4/12)
http://csr.mos.gov.cn/content/2016-04/12/content_32193.htm

 趙某は某市委副書記。趙某はゴルフが好きで、長期にわたって現地のゴルフ倶楽部の会員カードを持ち、会員より安い価格でゴルフをしていた。省が展開した会員カード返還活動期間中、趙某は組織にカード所持の状況を報告しなかったばかりか、継続してゴルフをするために会員カードを他人の名義に書き換え、勤務時間中に10数回ゴルフをした。

 上記の紀律にある「会員カード返還活動」は、2013年に全党で「厳粛に、真剣に会員カード返却活動を展開せよ」との号令がかかった件を指します。ゴルフコースや会員制レストランのカードなど、密議に使えるクローズな場所の会員カードを所持しないようにとの政治運動ですね。

 会員カード自身が贈収賄のアイテムにもなりますし、会員制のクラブを使用すること自体が倹約を名目とする中央八項規定違反でもあります。

 北京市の新聞『新京報』も、翌日中紀委の方針変更に呼応して、「ゴルフ自身は健康的なスポーツである」「自費で、仕事時間以外のプレーなら必要以上の非難には及ばない」と、GOLFの頭文字にまで言及してゴルフのヘルシーさを伝えています。

 党員たちが今更自腹でゴルフに行くクリーンでヘルシーな人たちとは思えないので、中紀委初の譲歩と見ていいと思います。もうすぐ発表されるはずの八項規定から外れていれば確定。党員を締め付けすぎて反発を買っているのかもしれませんね。

==参考消息==
2015/10/22 党内の非組織的活動が処分対象に
2013/5/27 汚職撲滅の次の手
http://news.xinhuanet.com/legal/2015-10/09/c_128300857.htm
http://news.xinhuanet.com/2015-10/21/c_1116897567.htm
http://epaper.bjnews.com.cn/html/2016-04/13/content_630623.htm?div=-1
タグ:中紀委
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2016年04月12日

反腐敗は経済成長に悪影響なのか

 誰が言っているのかはわからないのですが、「反腐敗は経済成長を阻害している」との批判を昨年あたりからよく見かけるようになりました。実際には中国の言い分だけを書いている記事を読んだだけで、批判そのものは目にしたことはないのですが。

 ちょうど経済発展が鈍化したのとタイミングが同じなので、反腐敗で官僚たちが萎縮してしまっているというのが大筋の内容。自分たちの仕事を問題視されてはたまらない中央紀律検査委員会が、いくつか例を挙げて反論しています。

 安徽省滁州市は経験者が2人続いて書記が失脚しましたが、2015年上半期のGDP成長率は10.1%。どんなもんじゃいという訳です。先に失脚したのは省政協副主席に昇格していた、いわゆる老虎の韓先聡なので取り上げられているんでしょうね。

 他にも書記、市長が相次いで失脚した江蘇省南京市、青海省西寧市、江西省新余市などがいずれも10%近い発展を遂げた、どんなm(ry

 ところがですね、GDPだけ見るとおかしいことになるんです。

 例えば江西省委書記を務め、全国政協副主席に転出していた蘇栄です。蘇栄の党籍剥奪記念に開かれた省常務委会議では、「在任中に江西省の経済、社会発展に遅れが出た」と非難。2007年から2013年までの5年あまりがその期間なります。

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※どこに遅れが出ているのか

 リーマンショックの影響もなかったことになってるし、蘇栄在任時も落ち込んでいるどころか堅調じゃないですか。政協副主席に転出した翌年の2014年は「経済、社会が健康的で比較的早い発展」とあるのですが、逆に減速してます。

 中紀委によるGDPを使った説明はつい先日も行われていて、「2010年から12年のGDP成長率は2.9%落ち込んだが、(反腐敗が始まった)12年から15年の落ち込みは0.8%だから、反腐敗が経済成長の減速を鈍化させている」(意訳)とのことです。

 さすがに今回はGDPだけではなく複数の企業の経営状態に触れています。ここまで中紀委が潔白を証明しなければならないくらいに、批判が集まっているということでしょう。

 この件については引き続き追いかける必要がありそうです。

公用車廃止でどうやって出勤するか 80分歩く人も(銭江晩報 2016/4/3)

 こちらも方向性としては反腐敗を肯定的に捉える報道です。

 浙江省では107の単位で1528台の公用車を廃止しました。バスに乗ったり歩いて出勤したりと様々、早起きっていいねというオチかと思いきや、交通費として補助金が出るようになっています。一般の職員で600元(約1万円)、処級で1000元(約1万7000円)、庁局級で1600元(約2万7000円)となっています。

 公用車に変わって配車アプリで車を呼び、通勤している人が紹介されています。閣僚級である「老虎」一歩手前の庁局級はともかく、一般職員でも1日当たり20元弱(約320円)出ている計算で、下のコメント欄では「自転車に乗れ」「庶民はバスやぞ」「補助なんかないぞ」と怨嗟の声であふれています。

 こういう記事を反腐敗の一環と考えているあたり、公務員の待遇が一般といかにかけ離れているかまだ理解できていないようですね。

==参考消息==
http://www.ccdi.gov.cn/xwtt/201510/t20151015_63504.html
http://opinion.people.com.cn/n1/2016/0119/c1003-28065065.html
http://cpc.people.com.cn/pinglun/n1/2016/0121/c78779-28071984.html
http://opinion.people.com.cn/n1/2016/0125/c1003-28080327.html
http://theory.people.com.cn/n1/2016/0126/c40531-28084227.html
http://opinion.people.com.cn/n1/2016/0127/c1003-28087226.html
http://www.thepaper.cn/newsDetail_forward_1443434
http://news.xinhuanet.com/legal/2016-03/25/c_128834459.htm
http://www.news.cn/talking/20150924a/index.htm
http://www.thepaper.cn/newsDetail_forward_1440002
https://zh.wikipedia.org/wiki/中华人民共和国国内生产总值
蘇栄が叩かれ過ぎてかわいそう 2015/2/17
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