2017年10月29日

周到な中央指導部人選

 世間的には常務委員のお披露目も終わって、中国の人事に関する興味は一気に落ち込んでいるだろうが、第19期中央指導部の顔ぶれをどうやって決めたかについて、新華社が教えてくれていた。第17期、第18期と読み比べるとなかなか面白い。

 ここでいう中央指導機構とは政治局委員のことと考えて差し支えない。

 第17期中央指導機構の予備選挙は第16期中央委員、候補委員の約400名が一堂に集められて推薦を行っている。第18期の中央指導機構についても同様だった。

 ところが、第19期の中央指導機構の選出は方法を変えた。習近平は現役の党と国家の指導者、中央軍事委委員、党内の古参同志と面談を行った。今年の4月から6月まで、実に3ヶ月をかけて話し合いを行っている。

 また中央の関連指導同志が正省部級(閣僚級)、解放軍正戦区職党員の主要同志、第18期中央委員合わせて258人、また中央軍委の指導部が正戦区職同志32人の意見を聞き取ったという。

 今年5月、北京に呼び出されたある地方自治体の省部級幹部。まず入った中南海の談話室には、『談話調研関連手順』、『現在の党と国家の指導者の党員同志名簿』、『正省部級党員指導幹部名簿』が置かれていたという。

 手順に従い、幹部には資料閲覧の時間が与えられ、独立し、かつ真剣な思考の準備が行われた。これを基礎とし、面談方式で第19期中央指導部に推薦する人選について意見が聞き取られている。

 この幹部は、第19期中央指導機構の人選に対して推薦する機会と資格を与えられたことに、「わがとうのみんしゅのさくふうをじゅうぶんにたいげんしている」と賞賛しているが、密室での票集めのどこが民主的なのかわからない。

 政治局委員は習御大自らと、閣僚級は常務委員とサシで勝負することになる。これで真っ当な意見が出てくるか。

 推薦される人数は限定せず、票数自体は参考とするだけとなった。人気があったり、買収されていたとしても参考意見にしかならない。

 これまでは少なくとも400人の目がある会議で推薦というか予備選挙を行っていたのが、密室での方式に変わっている。これでは推薦結果が操作されてもわからない。

 「重大な創新」とされた変更の理由を以下のように説明している。

 十七大(第17回党大会)、十八大(第18回党大会)では、会議を開催して推薦する方式だった。しかし、過度に票の数を強調したため、弊害が出てしまった。ある同志は会議における推薦過程で、簡単に『票に書くと約束をした』。投票は思いのままに行われたため、民意とはかけ離れ、コネ票や人情票を投じることさえあった。

 中央がすでに審査・処分を行っている周永康、孫政才、令計画らは会議の推薦を利用し、票集めや買収で当選させるなど非組織活動を行った。
 令計画が常務委員候補の予備投票で最高得票を獲得した結果に、習近平は驚いただろう。クローズの場ではあるが、その中にいる者は結果がわかる。

十八大の党代表としても令計画は「全票当選」を果たしていたが、習近平は「高票当選」だった。いかに令計画が買収や根回しをしていたとしても、投票結果が出てからでは習近平にもどうしようもない。だから、今回は絶対安全な方法に改められたのだろう。今回、習近平は貴州省で「全票当選」している。

 孫政才は今までのところ「自分の昇進にしか興味がない人」という設定なのだけど、周永康や令計画らと並べられるところには違和感を感じる。並べることで彼らと同じくらいの悪人だと印象付けたいのだろうか。孫政才が彼らのお仲間だとは思えない。

 ともかく、第19期党中央委員会の選出過程からは、習近平自身は「習一強」などと考えていないことがわかった。人選の下準備は習近平自らが指揮したとある。なかなか用心深いことがわかる。

 なお、この人選では年齢についての意見も出た。「年齢が条件にあっていたとしても、候補者が引き続き推薦されるとは限らない。政治的表現はどうか、クリーンであるか、事業が(候補者を)必要としているかなどが勘案される」というものだ。

 第17期の政治局委員選出では、63歳以下の正部級党員、解放軍で正部級に相当する正大軍区幹部が条件とされていた。民間の主張と退けられてしまった「七上八下」(党大会で67歳以下なら政治局委員続行)を、間接的ながら公式に認めていたことに10年後に気づいた。

 10年後の今回は、李源潮、張春賢、劉奇葆、楊晶といった、年齢だけなら中央の指導部に残ってもおかしくなかった面々についての説明である。習に対する忠誠心、彼らにできる仕事があるのかなどが基準になったと明確に示されている。

 一部の党と国家の指導者は、党と人民の利益を重視し、国家の発展と民族の振興に対して責任を持つ精神から、自ら引退し若い同志に譲った。
 このフレーズは毎回あるのだけれど、クビの基準がはっきりした後に「自ら退くことは、共産党人の心の広さと優れた品格」であると言われて信じる人はいないだろう。

==参考消息==
http://cpc.people.com.cn/GB/104019/104118/6422535.html
http://news.xinhuanet.com/18cpcnc/2012-11/15/c_113700375.htm
http://news.xinhuanet.com/politics/19cpcnc/2017-10/26/c_1121860147.htm
ラベル:十九大
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2017年10月26日

今日の人民日報一面

 本日26日付けの人民日報1面が5年前と全く様変わりしている。

 どちらも新しい常務委員お披露目翌日の1面だ。今回(第19期)と5年前(第18期)を並べてみた。右が26日付の一面である。

2017102601.png

 習近平の巨大写真、下に判別が出来ない新常務委員の全体写真。右上には「習近平、求めに応じトランプ大統領と電話会談」の記事が配置されている。

 記事では、トランプが党大会の「勝利閉幕」を祝福したことになっている。「勝利閉幕」って英語でなんて言うんだろうか。

 なお、習、李克強は5年前と同じ写真を使用している。期が変わるごとに撮り直していたはずなのだが、長期政権となっても写真はピーク時のものが使われるのだろうか。李だけ変えたら違和感が残るから、李も流用させたというところか。

==参考消息==
http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2017-10/26/nw.D110000renmrb_20171026_1-07.htm
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2017年10月25日

第19期中央政治局委員名簿を見た感想

 25日午前11時45分ごろとされていた、第19期常務委員のお披露目は、10分程度遅れて行われた。習近平、李克強に加え、2日ほど前から報じられていた顔ぶれと同じだった。

 序列から察すると、担当する職務は以下の通りになるだろう。かっこ内はおそらく就任するものになる。

 栗戦書 (全国人大常務委員長)
 汪洋 (全国政治協商会議主席)
 王滬寧 中央書記処常務書記(中央精神文明建設委員会主任、中央党校校長)
 趙楽際 中央紀律検査委員会書記(中央監察委員会主席)
 韓正(国務院常務副総理)
 人選こそ外してはいないが、王滬寧は嫌がりそうという理由で外して6人ですと発表した上、担当も大外し。さらなる修行が必要である。

 新任政治局委員を、上がって当然枠とまあ順当枠、そして意外枠に分けた。当然枠は、党大会より前に政治局委員が兼任するポストを確保している、あるいはしそうな面々だ。意外枠は単に注意を払えていなかっただけかもしれない。

 中央書記処を兼任するポストは中央党校校長、中央組織部部長、中央宣伝部部長、中央弁公厅主任、中紀律委副書記 なので、ここに名前のある丁薛祥、郭声琨、黄坤明、陳希のポストは確定している。

■当然枠
李鴻忠 天津市委書記
陳全国 新疆自治区委書記
陳敏爾 重慶市委書記
郭声琨(中央政法委書記)
黄坤明(中央宣伝部長)
蔡奇 北京市委書記
陳希(中央組織部長)

■順当枠
丁薛祥(中央弁公庁主任)
張又侠 中央軍事委副主席

■意外枠
王晨(全国人大常務副委員長)
劉鶴(副総理)
李希(副総理か上海市委書記)
李強(副総理か上海市委書記)
楊潔篪(副総理)
楊暁渡 中央紀律委副書記

■留任枠
胡春華
孫春蘭 
許其亮 中央軍事委副主席

 政治局委員留任は3人となった。他の17人のポストを埋めていくだけだから、そんなに難しいことではないと思う。

 汪洋以外の副総理が全員退任し、国務委員も楊晶、常万全、王勇が退任、する。楊潔篪、郭声琨が政治局委員に昇格し恐らく国務委員からは外れる。汪洋は政協主席になる公算が高いので、李克強以外の国務院常務委員は全員入れ替わることになる。

 張高麗に代わって常務副総理を務めるのが韓正になり、後の副総理3人は劉鶴、李希、李強、楊潔篪辺りになるのではと思う。

 第18期で外交担当の国務委員を務めた楊潔篪が政治局入りしたので、これは銭其シン以来の外交担当副総理誕生だろう。外交強化姿勢がうかがえる。と同時に、楊の能力も買われている。

 劉鶴は恐らく確定で、李希、李強のどちらかが上海市委書記に転出する。上海経験がある李希か、浙江時代の子飼い・李強か。その代わり、文教担当は国務委員に格下げになる。

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※在りし日の張春賢さん

 第一報を読んだ際には気づかなかったが、張春賢・中央党建設工作領導小組副組長と、劉奇葆・宣伝部長が政治局委員から外れていたことが驚きだ。中央委員には名前があったので油断していた。いずれも64歳。年齢だけならもう一期務められるはずだった。

 常務委員の人選を考えるとき、政治局委員から候補を選ぶ作業から始めた。各委員の上がり目を考えていたのだけれど、この2人はいい情報がなく、それらしい行き先を考えるのに苦慮した。なるほどこういう手があったかと感心してしまった。

 常務委員から政治局委員、あるいは中央委員への降格は、この30年で胡耀邦、胡啓立の事例があるが、いずれも大事件で詰め腹を切らされた結果だ。政治局委員から中央委員への降格例は文化大革命までさかのぼらないといけない。

 張は新疆統治が失敗とみなされ解任、あからさまな閑職をあてがわれた。中央委員に格下げとなれば、現在のポストからも外されるだろう。

 前任者の王楽泉も任期途中で解任されたが、王は引退を翌年に控えたタイミングだったので、なんとか逃げ切った。張は中央委員なので引退が繰り上げられたとはいえ、少なくとも1年くらいは生き恥をさらさなければいけない。

 今回の人事で、これまでの慣習はいくつか覆された。66歳にして中央委員から外され、第一線からの引退を余儀なくされた李源潮についていえば、年齢で画一的に引退ということはなくなったし、張や劉のように降格人事も起こりうるということである。

 今回の幹部選抜については、『新しい中央委員会と中央紀律検査委の誕生記』が参考になる。

 「政治的な標準を第一に置く。政治上クリアできなければ、『一票否決』(他が良くても、1点でも瑕疵があれば一発即死)を堅持しなければならない」。

 「党中央と高度に一致できず、自覚して党中央の権威と集中統一された指導を守れないものは一票否決」

 「党中央の決定に対し態度がはっきりとせず、心の底では不満すら抱き別のやり方を行うものは一票否決」
 「立場をはっきりとしない、日和見主義、名誉を重んじて言動が慎重になる、いわゆる『開明紳士』になる。あえて責任を担わないものは一票否決」
 李源潮や張春賢はどれかの基準をクリアできなかったということなのだろう。単に無能判定されたのか、あるいは党中央、すなわち習近平への忠誠が認められなかったのか。

 通常であれば、宣伝部長の劉は後任の<黄坤明との交代式のようなものが行われる。宣伝部長は副国級のため、正部長の陳希が交代を宣言するため同席する。その場で、後任と組織部担当者は前任者の功績を称えるのが通例だ。ただし、これは前任者がまともに退任している場合だ。

 先日党籍をはく奪された孫政才を例にとると、孫は交代式に出席しておらず、後任の陳敏爾も組織部担当者も孫の功績についてはグランドスルーしていた。劉はどのような形式で、降格が伝えられるのだろうか。交代式の席上なのか、「こいつは」みたいな記事が書かれるのか。

 ところで、胡春華と孫春蘭の行き先がはっきりとしない。国家副主席、中央統一戦線部部長、全国政協副主席なら空いているのだが。

==参考消息==
http://news.xinhuanet.com/politics/19cpcnc/2017-10/25/c_1121853954.htm
http://news.xinhuanet.com/politics/19cpcnc/2017-10/24/c_1121850995.htm
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