2017年11月12日

武装警察は中央軍事委指揮下へ

 10月31日、全国人大常務委員会会議でにおいて、『中国人民武装警察部隊の改革期間の関連法律規定の暫時調整、適用に関する規定』の草案が採択された。

 会議に出席した武装警察の制服トップである王寧司令員は、改革の趣旨について、公安部と中央軍事委の二重支配から中央軍事委に一本化すると説明している。中央軍事委が指揮権を持つようになるのだ。

 二重支配は建前上の話。これまでは地方政府が治安維持の名目で武装警察を出動させることがあった。例えば、2012年2月に起きた王立軍の亡命未遂事件だ。

 当時重慶市副市長だった王立軍が、重慶市に隣接する四川省の駐成都米国総領事館に駆け込んだため、薄熙来・重慶市委書記は市所属の武装警察を出動させ、公安車両が総領事館を包囲する写真が微博などで拡散された。装甲車が出動し、黄奇帆市長が包囲を指揮していたなどとも言われている(役職は全て当時のもの)。

 武装警察は国務院と中央軍事委の二重支配を受けることになっているが、実際は武装警察の第一政治委員を兼ねる公安部長に指揮権がある。周永康は2002年からこの第一政治委員を務め、2007年からは公安、裁判所、検察を束ねる中央政法委書記に昇格した。

 中央政法委書記には武装警察を指揮する権限はないのだが、公安部の上級部門として指揮権を有していたのが実情だ。

 2012年3月の両会最終日、温家宝が重慶市指導部を批判した翌日、薄熙来が重慶市委書記を解任され中央紀律検査委の調査を受けることになると、薄と関係の深かった金庫番・徐明も身柄を拘束された。

 周永康は徐を奪い返そうと武装警察を動員し、首都警護を任とする解放軍第38軍と対峙。解放軍側が「国を攻撃すれば反乱軍となる」と撤退を促して最悪の事態は回避されたものの、ひとつ間違えば一触即発の事態に陥っていた。

 薄は公判で、王立軍問題をどう処理するかについて、上級の指示を受けたと述べている。米領事館をすぐさま包囲できたのも、徐明の一件からも、上級が周永康を指しているは明らかだ。

 そういえば、薄熙来は王立軍逃亡後に重慶で開催された政法委大集合の集いに出席し、「永康書記」と親密さをアピールしていたことを思い出した。こういう呼び方を公式の場でやることはあまり見かけない。

 解放軍と真正面からぶつかれば武装警察でもひとたまりはないだろうが、軍を抑えた者が最高指導者の中国において、武力で肉薄する者がいるという事実は重かったに違いない。それは胡錦濤にしても、胡錦濤の後を継ぐことになっていた習近平にしてもだ。

 武装警察の指揮権を公安から取り上げることは、公安部の地位低下につながる。前任者より年上で65歳の趙克志が公安部長に就任した。これまでのように国務委員をしないのであればすでに定年だから、習近平お気に入りの傅政華あたりがすぐさま後任に就任するのではないだろうか。

 地方自治体では公安トップが政法委書記を兼任することで、司法への介入が行われていたことから、2010年に兼任しないよう通達が出され、現在兼任する自治体はない。

 武装警察を軍と位置付けることで、中央軍事委が指揮権を持つことを正当化したわけだが、胡錦濤時代に政法委書記が事実上指揮権を握っていた方が異常事態なのだから、これはこれで歓迎すべきなのかもしれない。

==参考消息==
http://news.xinhuanet.com/2017-10/31/c_1121886129.htm
http://cn.rfi.fr/中国/20171101-中央军委揽权武警-杜绝薄熙来调武警成都围困王立军事件重演
http://news.dwnews.com/china/news/2017-11-01/60020980.html
http://news.dwnews.com/china/news/2017-11-01/60020986.html
https://news.mingpao.com/pns/dailynews/web_tc/article/20171102/s00013/1509558595415
http://cn.rfi.fr/中国/20130827-公诉人说明删除“薄熙来上级”文字或与周永康有关
http://www.bbc.com/zhongwen/trad/china/2013/08/130831_bo_secret_statement
http://www.bbc.com/zhongwen/trad/press_review/2012/07/120701_rolling_uk_test.shtml
http://www.rfa.org/cantonese/news/china_landdispute_sichuan-20041108.html/
http://news.ltn.com.tw/news/focus/paper/17436
http://www.ce.cn/xwzx/gnsz/gdxw/201202/09/t20120209_23057569.shtml
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2017年10月29日

周到な中央指導部人選

 世間的には常務委員のお披露目も終わって、中国の人事に関する興味は一気に落ち込んでいるだろうが、第19期中央指導部の顔ぶれをどうやって決めたかについて、新華社が教えてくれていた。第17期、第18期と読み比べるとなかなか面白い。

 ここでいう中央指導機構とは政治局委員のことと考えて差し支えない。

 第17期中央指導機構の予備選挙は第16期中央委員、候補委員の約400名が一堂に集められて推薦を行っている。第18期の中央指導機構についても同様だった。

 ところが、第19期の中央指導機構の選出は方法を変えた。習近平は現役の党と国家の指導者、中央軍事委委員、党内の古参同志と面談を行った。今年の4月から6月まで、実に3ヶ月をかけて話し合いを行っている。

 また中央の関連指導同志が正省部級(閣僚級)、解放軍正戦区職党員の主要同志、第18期中央委員合わせて258人、また中央軍委の指導部が正戦区職同志32人の意見を聞き取ったという。

 今年5月、北京に呼び出されたある地方自治体の省部級幹部。まず入った中南海の談話室には、『談話調研関連手順』、『現在の党と国家の指導者の党員同志名簿』、『正省部級党員指導幹部名簿』が置かれていたという。

 手順に従い、幹部には資料閲覧の時間が与えられ、独立し、かつ真剣な思考の準備が行われた。これを基礎とし、面談方式で第19期中央指導部に推薦する人選について意見が聞き取られている。

 この幹部は、第19期中央指導機構の人選に対して推薦する機会と資格を与えられたことに、「わがとうのみんしゅのさくふうをじゅうぶんにたいげんしている」と賞賛しているが、密室での票集めのどこが民主的なのかわからない。

 政治局委員は習御大自らと、閣僚級は常務委員とサシで勝負することになる。これで真っ当な意見が出てくるか。

 推薦される人数は限定せず、票数自体は参考とするだけとなった。人気があったり、買収されていたとしても参考意見にしかならない。

 これまでは少なくとも400人の目がある会議で推薦というか予備選挙を行っていたのが、密室での方式に変わっている。これでは推薦結果が操作されてもわからない。

 「重大な創新」とされた変更の理由を以下のように説明している。

 十七大(第17回党大会)、十八大(第18回党大会)では、会議を開催して推薦する方式だった。しかし、過度に票の数を強調したため、弊害が出てしまった。ある同志は会議における推薦過程で、簡単に『票に書くと約束をした』。投票は思いのままに行われたため、民意とはかけ離れ、コネ票や人情票を投じることさえあった。

 中央がすでに審査・処分を行っている周永康、孫政才、令計画らは会議の推薦を利用し、票集めや買収で当選させるなど非組織活動を行った。
 令計画が常務委員候補の予備投票で最高得票を獲得した結果に、習近平は驚いただろう。クローズの場ではあるが、その中にいる者は結果がわかる。

十八大の党代表としても令計画は「全票当選」を果たしていたが、習近平は「高票当選」だった。いかに令計画が買収や根回しをしていたとしても、投票結果が出てからでは習近平にもどうしようもない。だから、今回は絶対安全な方法に改められたのだろう。今回、習近平は貴州省で「全票当選」している。

 孫政才は今までのところ「自分の昇進にしか興味がない人」という設定なのだけど、周永康や令計画らと並べられるところには違和感を感じる。並べることで彼らと同じくらいの悪人だと印象付けたいのだろうか。孫政才が彼らのお仲間だとは思えない。

 ともかく、第19期党中央委員会の選出過程からは、習近平自身は「習一強」などと考えていないことがわかった。人選の下準備は習近平自らが指揮したとある。なかなか用心深いことがわかる。

 なお、この人選では年齢についての意見も出た。「年齢が条件にあっていたとしても、候補者が引き続き推薦されるとは限らない。政治的表現はどうか、クリーンであるか、事業が(候補者を)必要としているかなどが勘案される」というものだ。

 第17期の政治局委員選出では、63歳以下の正部級党員、解放軍で正部級に相当する正大軍区幹部が条件とされていた。民間の主張と退けられてしまった「七上八下」(党大会で67歳以下なら政治局委員続行)を、間接的ながら公式に認めていたことに10年後に気づいた。

 10年後の今回は、李源潮、張春賢、劉奇葆、楊晶といった、年齢だけなら中央の指導部に残ってもおかしくなかった面々についての説明である。習に対する忠誠心、彼らにできる仕事があるのかなどが基準になったと明確に示されている。

 一部の党と国家の指導者は、党と人民の利益を重視し、国家の発展と民族の振興に対して責任を持つ精神から、自ら引退し若い同志に譲った。
 このフレーズは毎回あるのだけれど、クビの基準がはっきりした後に「自ら退くことは、共産党人の心の広さと優れた品格」であると言われて信じる人はいないだろう。

==参考消息==
http://cpc.people.com.cn/GB/104019/104118/6422535.html
http://news.xinhuanet.com/18cpcnc/2012-11/15/c_113700375.htm
http://news.xinhuanet.com/politics/19cpcnc/2017-10/26/c_1121860147.htm
ラベル:十九大
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2017年10月26日

今日の人民日報一面

 本日26日付けの人民日報1面が5年前と全く様変わりしている。

 どちらも新しい常務委員お披露目翌日の1面だ。今回(第19期)と5年前(第18期)を並べてみた。右が26日付の一面である。

2017102601.png

 習近平の巨大写真、下に判別が出来ない新常務委員の全体写真。右上には「習近平、求めに応じトランプ大統領と電話会談」の記事が配置されている。

 記事では、トランプが党大会の「勝利閉幕」を祝福したことになっている。「勝利閉幕」って英語でなんて言うんだろうか。

 なお、習、李克強は5年前と同じ写真を使用している。期が変わるごとに撮り直していたはずなのだが、長期政権となっても写真はピーク時のものが使われるのだろうか。李だけ変えたら違和感が残るから、李も流用させたというところか。

==参考消息==
http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2017-10/26/nw.D110000renmrb_20171026_1-07.htm
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