省のトップである書記が交代する際、前任者の書記が主催する幹部会議を開催し、人事を司る中央組織部の副部長、直轄市と広東省、新疆自治区など政治局委員クラスの地域であれば部長が同席して、党中央の人事を発表する。
そこで前任者は、自分がいかにこの地を愛しているか、いかに身を粉にして働いたか、また、後任がいかに優れているかを褒め称え、今回の人事が適切なものであると、ことさらに強調する。一方、後任は抱負を述べつつ、前任者の能力を持ち上げる。こういうやりとりが形式化しているのだ。
しかし、この交替式での評価が永遠に変わらないかと言えばそうではない。先日党籍剥奪が決まった趙正永を例に紹介する。
2001年から16年に渡って陝西省にいた趙正永は、2016年3月27日に陝西省委書記を退任した。後任となった婁勤儉から、「現在のように陝西省が発展し得たのは、趙正永同志の功績が不可欠であった」と持ち上げられていた。
また「政治的立場は揺るぎない」「党の事業に忠誠を尽くしている」「中央の政策をやり抜く力がある」「断固とした党性(当の人間としての気質)」と、党員としての立場も非の打ちどころがない。
ところが4年後の2020年1月4日、中央紀律検査委員会が発表した党籍剥奪処分では、趙正永は4年前とは全く正反対の評価を受けた。
「党に忠誠を誓わず、畏敬の念がない」「党中央の政策、思想を重視せず、政治上は無責任、業務は不真面目であった」「面従腹背」「他人の意見を全く聞かない」などと、コテンパンに批判されているのだ。
趙への取り調べは2019年1月15日に発表されたのだが、9日にはかつての任地だった陝西省の違法建築が中央テレビで特集された。これは趙有罪確定を決定づける番組作りとなっていた。
国有地である秦嶺北麓に別荘が違法に建築された問題は、2014年から再三にわたり習近平が取り締まるよう指示を出していた。
上記の特集でも「総書記の重要な指示」が出てくるが、「当時の主要な省委指導者は、省委常務委員会で伝達、学習することもなく、また専門的に検討することもなかった」と説明。
「主要な省委指導者」は省委書記を婉曲に指す場合のフレーズだし、省委常務委員会で上部の指示を伝達できるのも省委書記だけだ。いうまでもなく、2014年当時の省委書記は趙正永である。
調査委員会は設置されたものの、202棟の違法建築を認めたが、すでに全て解体しているとの調査結果を公表している。2018年に中央テレビが行なった調査では1194棟が建築されているとのことなので、確かに202棟というのは現実とかけ離れている。
習近平は何度となく徹底調査をするよう指示を出したが、陝西省、秦嶺北麓のある西安市は真剣に対応しようとしなかった、というのが中央側のストーリーとなっている。
この問題では趙正永だけでなく、銭引安(省委常務委員)が懲役14年、魏民洲(西安市委書記)が無期懲役、上官吉慶(西安市市長)が2ランク降級処分を受けている。
ちなみに、趙正永の前任の書記は趙楽際。なんと常務委員にして、中央紀律検査委員会の書記様である。また、現在は江蘇省委書記となっている婁勤儉も、趙正永が省長から書記に昇格したと同じタイミングで、副省長から省長に昇格している。
そもそも、違法建築が始まっていたのかはよくわかっていない。2012年に趙正永が書記に就任してから管理がガバガバになり、別荘の建設ラッシュが始まったというわけでもなさそうなのだ。少なくとも同時期に省長を務めてた婁勤儉は同罪でアウトのはず。身びいきが過ぎる。
==参考消息==
http://esb.sxdaily.com.cn/pc/layout/201603/28/node_01.html
http://news.takungpao.com/mainland/focus/2016-03/3298704.html
http://www.ccdi.gov.cn/toutiao/202001/t20200104_207142.html
http://esb.sxdaily.com.cn/pc/content/202001/05/content_643671.html
http://www.xinhuanet.com/politics/2019-01/09/c_1123968682.htm
秦嶺北麓の違法開発も趙楽際に責任なし(2018年11月08日)
2020年01月08日
2019年11月16日
香港デモを支持する韓国人学生と中国人学生が肉体言語で衝突
駐韓国大使館は「香港情勢」について報道官の談話を発表した。掲載された日付は不明だ。
中身は香港情勢についてではなく、香港のデモ隊を支持する韓国人学生と、これに反発する中国人学生が衝突しているというものだった。
韓国社会に対して、談話は香港の事態は収集可能なので、友好的隣国のみなさんは理解と支持をお願いしている。
本題はここではなく、感情的な対立の一端を担ってしまっている中国人学生に向けて出された声明だ。
韓国の聯合ニュース、マレーシアの光華日報によると、ソウル大、漢陽大、高麗大などで、香港デモを支持する内容の文章や、レノンウォールよろしくポストイットが張り巡らされるようになったが、中国人留学生がこれを剥がして回っているのだ。
漢陽大では香港デモを支持する文章を校内に掲げようとしたところ、通りかかった中国人が剥がすよう要求し、拒否した韓国人学生と殴り合いになったという。どんどん増えていく中国人学生によって、中国国旗で支持を表明する文章は覆い隠された。感情的な対立ではなく、思い切り肉体がぶつかりあっていたのだ。
高麗大でも同様の衝突が起こり、大学側は「自由と民主の討論を守る文化に対して、正面切って挑発する行為」だと非難している。
討論で相手を納得させるのではなくいきなり実力行使に出るのは、そういう教育を受けていないからなのだろうか。香港の大学でも同じようなことをやっている中国人学生がいたが、私には破く権利があるみたいなことを喚いていた記憶がある。挙げ句の果ての人海戦術。どこまで行っても力押しか。
後ろ盾にハシゴを軽く外された格好だが、愛国的大学生はこのまま国のために頑張ってしまうのだろうか。そう育てたのは他ならぬ中国なので、中国も愛国的学生も傷だらけになる展開になることを期待している。
==参考消息==
http://kr.china-embassy.org/chn/sgxx/t1715865.htm
http://www.kwongwah.com.my/20191116/韩国大学生支持反送中-多所学府爆发中韩学生对/
https://cn.yna.co.kr/view/ACK20191115006000881
中身は香港情勢についてではなく、香港のデモ隊を支持する韓国人学生と、これに反発する中国人学生が衝突しているというものだった。
様々な原因により、事実が客観的に反映されず、韓国の一部地域、特に一部大学内で中韓両国の一部学生による、感情的な対立が起きている。「誤った情報」的な表現はない。香港問題について言及する欧米の政治家に向けて「口を挟む権利はない」などとお定まりの反論をするわけでもなく、彼らに対するようなむき出しの敵意が感じられない。
短い文章の中に「一部」が3回も使われている。割と多くても「極少數」を使う国なので、一部かどうかは韓国側の発表を確認しないと信じられないのだが、「誤った情報」に基づいて香港のデモ隊を支持している韓国人学生についてなぜか優しい。
韓国社会に対して、談話は香港の事態は収集可能なので、友好的隣国のみなさんは理解と支持をお願いしている。
本題はここではなく、感情的な対立の一端を担ってしまっている中国人学生に向けて出された声明だ。
中国の青年学生は中国の主権が損なわれ、事実が歪曲された言動に対して憤慨と反対を表明するのは当然であり、理にかなっている。同時に、中国政府は一貫して、海外の中国公民に現地の法律、法規を遵守し理性的に愛国的情熱を表現し、自身の安全を守るよう要求している。韓国人が誤った情報に基づいて香港デモを支持している。これに反対するのはいいとして、違法行為は許さないという意味だろう。愛国心は理解できるが一線を超えてはならないとのスタンスは、2005年の反日デモにおいても同じだった。一線を超えた学生には、犯罪行為であると断罪し逮捕に及んでいる。
我々は、在韓中国人留学生が学習に励み、韓国社会への中国に対する全面的理解を促進させ、また中韓友好関係において積極的に貢献することを希望する。
韓国の聯合ニュース、マレーシアの光華日報によると、ソウル大、漢陽大、高麗大などで、香港デモを支持する内容の文章や、レノンウォールよろしくポストイットが張り巡らされるようになったが、中国人留学生がこれを剥がして回っているのだ。
漢陽大では香港デモを支持する文章を校内に掲げようとしたところ、通りかかった中国人が剥がすよう要求し、拒否した韓国人学生と殴り合いになったという。どんどん増えていく中国人学生によって、中国国旗で支持を表明する文章は覆い隠された。感情的な対立ではなく、思い切り肉体がぶつかりあっていたのだ。
高麗大でも同様の衝突が起こり、大学側は「自由と民主の討論を守る文化に対して、正面切って挑発する行為」だと非難している。
討論で相手を納得させるのではなくいきなり実力行使に出るのは、そういう教育を受けていないからなのだろうか。香港の大学でも同じようなことをやっている中国人学生がいたが、私には破く権利があるみたいなことを喚いていた記憶がある。挙げ句の果ての人海戦術。どこまで行っても力押しか。
後ろ盾にハシゴを軽く外された格好だが、愛国的大学生はこのまま国のために頑張ってしまうのだろうか。そう育てたのは他ならぬ中国なので、中国も愛国的学生も傷だらけになる展開になることを期待している。
==参考消息==
http://kr.china-embassy.org/chn/sgxx/t1715865.htm
http://www.kwongwah.com.my/20191116/韩国大学生支持反送中-多所学府爆发中韩学生对/
https://cn.yna.co.kr/view/ACK20191115006000881
2019年11月02日
総理の後継者はそろそろ決めておかないといけない
四中全会は直前に降って湧いた「陳敏爾、胡春華の常務委員昇格」が人事の焦点となったが、蓋を開けてみれば欠員となった中央委員を、候補委員から補充するだけに留まった。
四中全会で人事異動があるとすれば、この4点を見極めておけばいいだろうと考えていた。
習近平と李克強が揃って常務委員に昇格した第17回党大会で、習近平の序列が6位、李克強の序列が7位となったことで勝負があった例を紐解くまでもなく、序列上位が総書記後継者であることは疑いがない。
序列上位となった者は総書記後継者として、中央書記処常務書記を兼任するのが胡錦濤以来の伝統だ。
常務委員会が政策について意見を出し、政治局が決定したものを関連機関に実行するよう指示を出すのが中央書記処の役割だ。ここで後継者は党務経験を積む。単に常務委員に昇格するだけでは権限がない。
そうなると、現在常務書記を務める王滬寧のクビを飛ばすのかという問題になる。常務書記を解任して宣伝工作だけをやらせるのか、序列第二位の書記に置くかの2通りとなるだろう。
すでに中央入りし副総理(序列第3位)となっている胡春華とは異なり、地方トップの陳敏爾が中央入りするのであれば、後任を探す必要がある。ところが、四中全会の直前に内モンゴル自治区委書記を解任され、行き先の決まっていなかった李紀恆は、閣僚(民政部部長)に格下げとなってしまった。
というようなことを念頭に書いたつもりだったのだが、常務委員昇格のお話は無かった。習近平がまだ後継者指名をしたくないのか、そもそもこの話はどこから来たのかなど謎は残るが、総書記は習近平が当分居座るだろうから急ぎで決める話でもなかった。
喫緊で決めておかなければならないのは、習近平ではなく李克強の後継者だ。
総理は三選が禁止されている。国家主席のように任期縛りを廃止する可能性がないとは言えないが、今のところ廃止される気配はないので、そろそろ後継者は決めておかなければならないのだ。
初代の周恩来を除けば、6人いる国務院総理は副総理経験者が昇格している。明確な規定があるわけではないが、総書記が中央書記処書記を経験するように、国務院総理も副総理を経験しているとやりやすいのだろう。
現在副総理は4人いて、2022年の第20回党大会では胡春華以外の3人が定年の68歳を超える。王岐山のために動かさなかった定年を動かすことは考えられないから、中央委員再任も難しいだろう。冠婚葬祭がお仕事の国家副主席と異なり、行政職の副総理がヒラ党員というわけにはいかないので、韓正、孫春蘭、劉鶴が総理に昇格する目はかなり小さい。
常務委員では汪洋が副総理経験者だが、全国政協主席は上がりポストなので総理や常務副総理に転じる展開がちょっと考えづらい。また、汪洋は一期しか総理ができないので、安定した政権運営には向いていない。
かなり大ざっぱな論考ではあるが、総理候補は胡春華以外に見当たらないのが現状なのだ。
四中全会で人事異動があるとすれば、この4点を見極めておけばいいだろうと考えていた。
四中全会の見どころ
— 水彩画お花研究家 (@suisaigagaga) October 31, 2019
①急に降ってわいた陳敏爾と胡春華のどちらが序列上位になるか
②序列上位が中央書記処書記、あるいは常務書記を兼任するか
③そうなった場合、王滬寧は解任されるのか
④陳敏爾が中央入りした場合、重慶市は誰が引き継ぐのか
習近平と李克強が揃って常務委員に昇格した第17回党大会で、習近平の序列が6位、李克強の序列が7位となったことで勝負があった例を紐解くまでもなく、序列上位が総書記後継者であることは疑いがない。
序列上位となった者は総書記後継者として、中央書記処常務書記を兼任するのが胡錦濤以来の伝統だ。
常務委員会が政策について意見を出し、政治局が決定したものを関連機関に実行するよう指示を出すのが中央書記処の役割だ。ここで後継者は党務経験を積む。単に常務委員に昇格するだけでは権限がない。
そうなると、現在常務書記を務める王滬寧のクビを飛ばすのかという問題になる。常務書記を解任して宣伝工作だけをやらせるのか、序列第二位の書記に置くかの2通りとなるだろう。
すでに中央入りし副総理(序列第3位)となっている胡春華とは異なり、地方トップの陳敏爾が中央入りするのであれば、後任を探す必要がある。ところが、四中全会の直前に内モンゴル自治区委書記を解任され、行き先の決まっていなかった李紀恆は、閣僚(民政部部長)に格下げとなってしまった。
というようなことを念頭に書いたつもりだったのだが、常務委員昇格のお話は無かった。習近平がまだ後継者指名をしたくないのか、そもそもこの話はどこから来たのかなど謎は残るが、総書記は習近平が当分居座るだろうから急ぎで決める話でもなかった。
喫緊で決めておかなければならないのは、習近平ではなく李克強の後継者だ。
総理は三選が禁止されている。国家主席のように任期縛りを廃止する可能性がないとは言えないが、今のところ廃止される気配はないので、そろそろ後継者は決めておかなければならないのだ。
初代の周恩来を除けば、6人いる国務院総理は副総理経験者が昇格している。明確な規定があるわけではないが、総書記が中央書記処書記を経験するように、国務院総理も副総理を経験しているとやりやすいのだろう。
現在副総理は4人いて、2022年の第20回党大会では胡春華以外の3人が定年の68歳を超える。王岐山のために動かさなかった定年を動かすことは考えられないから、中央委員再任も難しいだろう。冠婚葬祭がお仕事の国家副主席と異なり、行政職の副総理がヒラ党員というわけにはいかないので、韓正、孫春蘭、劉鶴が総理に昇格する目はかなり小さい。
常務委員では汪洋が副総理経験者だが、全国政協主席は上がりポストなので総理や常務副総理に転じる展開がちょっと考えづらい。また、汪洋は一期しか総理ができないので、安定した政権運営には向いていない。
かなり大ざっぱな論考ではあるが、総理候補は胡春華以外に見当たらないのが現状なのだ。
