2017年10月25日

第19期中央政治局委員名簿を見た感想

 25日午前11時45分ごろとされていた、第19期常務委員のお披露目は、10分程度遅れて行われた。習近平、李克強に加え、2日ほど前から報じられていた顔ぶれと同じだった。

 序列から察すると、担当する職務は以下の通りになるだろう。かっこ内はおそらく就任するものになる。

 栗戦書 (全国人大常務委員長)
 汪洋 (全国政治協商会議主席)
 王滬寧 中央書記処常務書記(中央精神文明建設委員会主任、中央党校校長)
 趙楽際 中央紀律検査委員会書記(中央監察委員会主席)
 韓正(国務院常務副総理)
 人選こそ外してはいないが、王滬寧は嫌がりそうという理由で外して6人ですと発表した上、担当も大外し。さらなる修行が必要である。

 新任政治局委員を、上がって当然枠とまあ順当枠、そして意外枠に分けた。当然枠は、党大会より前に政治局委員が兼任するポストを確保している、あるいはしそうな面々だ。意外枠は単に注意を払えていなかっただけかもしれない。

 中央書記処を兼任するポストは中央党校校長、中央組織部部長、中央宣伝部部長、中央弁公厅主任、中紀律委副書記 なので、ここに名前のある丁薛祥、郭声琨、黄坤明、陳希のポストは確定している。

■当然枠
李鴻忠 天津市委書記
陳全国 新疆自治区委書記
陳敏爾 重慶市委書記
郭声琨(中央政法委書記)
黄坤明(中央宣伝部長)
蔡奇 北京市委書記
陳希(中央組織部長)

■順当枠
丁薛祥(中央弁公庁主任)
張又侠 中央軍事委副主席

■意外枠
王晨(全国人大常務副委員長)
劉鶴(副総理)
李希(副総理か上海市委書記)
李強(副総理か上海市委書記)
楊潔篪(副総理)
楊暁渡 中央紀律委副書記

■留任枠
胡春華
孫春蘭 
許其亮 中央軍事委副主席

 政治局委員留任は3人となった。他の17人のポストを埋めていくだけだから、そんなに難しいことではないと思う。

 汪洋以外の副総理が全員退任し、国務委員も楊晶、常万全、王勇が退任、する。楊潔篪、郭声琨が政治局委員に昇格し恐らく国務委員からは外れる。汪洋は政協主席になる公算が高いので、李克強以外の国務院常務委員は全員入れ替わることになる。

 張高麗に代わって常務副総理を務めるのが韓正になり、後の副総理3人は劉鶴、李希、李強、楊潔篪辺りになるのではと思う。

 第18期で外交担当の国務委員を務めた楊潔篪が政治局入りしたので、これは銭其シン以来の外交担当副総理誕生だろう。外交強化姿勢がうかがえる。と同時に、楊の能力も買われている。

 劉鶴は恐らく確定で、李希、李強のどちらかが上海市委書記に転出する。上海経験がある李希か、浙江時代の子飼い・李強か。その代わり、文教担当は国務委員に格下げになる。

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※在りし日の張春賢さん

 第一報を読んだ際には気づかなかったが、張春賢・中央党建設工作領導小組副組長と、劉奇葆・宣伝部長が政治局委員から外れていたことが驚きだ。中央委員には名前があったので油断していた。いずれも64歳。年齢だけならもう一期務められるはずだった。

 常務委員の人選を考えるとき、政治局委員から候補を選ぶ作業から始めた。各委員の上がり目を考えていたのだけれど、この2人はいい情報がなく、それらしい行き先を考えるのに苦慮した。なるほどこういう手があったかと感心してしまった。

 常務委員から政治局委員、あるいは中央委員への降格は、この30年で胡耀邦、胡啓立の事例があるが、いずれも大事件で詰め腹を切らされた結果だ。政治局委員から中央委員への降格例は文化大革命までさかのぼらないといけない。

 張は新疆統治が失敗とみなされ解任、あからさまな閑職をあてがわれた。中央委員に格下げとなれば、現在のポストからも外されるだろう。

 前任者の王楽泉も任期途中で解任されたが、王は引退を翌年に控えたタイミングだったので、なんとか逃げ切った。張は中央委員なので引退が繰り上げられたとはいえ、少なくとも1年くらいは生き恥をさらさなければいけない。

 今回の人事で、これまでの慣習はいくつか覆された。66歳にして中央委員から外され、第一線からの引退を余儀なくされた李源潮についていえば、年齢で画一的に引退ということはなくなったし、張や劉のように降格人事も起こりうるということである。

 今回の幹部選抜については、『新しい中央委員会と中央紀律検査委の誕生記』が参考になる。

 「政治的な標準を第一に置く。政治上クリアできなければ、『一票否決』(他が良くても、1点でも瑕疵があれば一発即死)を堅持しなければならない」。

 「党中央と高度に一致できず、自覚して党中央の権威と集中統一された指導を守れないものは一票否決」

 「党中央の決定に対し態度がはっきりとせず、心の底では不満すら抱き別のやり方を行うものは一票否決」
 「立場をはっきりとしない、日和見主義、名誉を重んじて言動が慎重になる、いわゆる『開明紳士』になる。あえて責任を担わないものは一票否決」
 李源潮や張春賢はどれかの基準をクリアできなかったということなのだろう。単に無能判定されたのか、あるいは党中央、すなわち習近平への忠誠が認められなかったのか。

 通常であれば、宣伝部長の劉は後任の<黄坤明との交代式のようなものが行われる。宣伝部長は副国級のため、正部長の陳希が交代を宣言するため同席する。その場で、後任と組織部担当者は前任者の功績を称えるのが通例だ。ただし、これは前任者がまともに退任している場合だ。

 先日党籍をはく奪された孫政才を例にとると、孫は交代式に出席しておらず、後任の陳敏爾も組織部担当者も孫の功績についてはグランドスルーしていた。劉はどのような形式で、降格が伝えられるのだろうか。交代式の席上なのか、「こいつは」みたいな記事が書かれるのか。

 ところで、胡春華と孫春蘭の行き先がはっきりとしない。国家副主席、中央統一戦線部部長、全国政協副主席なら空いているのだが。

==参考消息==
http://news.xinhuanet.com/politics/19cpcnc/2017-10/25/c_1121853954.htm
http://news.xinhuanet.com/politics/19cpcnc/2017-10/24/c_1121850995.htm
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2017年10月24日

第19期中央委員名簿を見た感想

 第19回党大会が閉幕し、中央委員、中央候補委員、中央紀律検査委員の名簿が発表されたので、目を通した感想をまとめた。

 流出したとされる中紀委委員名簿に、王岐山の名前がなく、代わりに趙楽際の名前があったと明報が報じていたが、その通りになった。

 今さら副書記をやるとは思えないので、明報の推測通り、中紀委書記は趙なのだろう。

 来年からは国家監察委員会のトップを兼任する目算だ。国家監察委はいわゆる四套班子(党委員会、政府、人大、政協)と同格になり、序列が5番目になることから、趙の序列も5番目と考えられる。

 これまで中紀委は四套班子より半級下に位置付けられていた。格で言えば副国級だ。これまでは省などの地方自治体や中央政府機関への査察しかできないことになっていたが、18期より始まった巡視で全人代やら宣伝部やらに巡視を行なっていて、これまでの設定は有名無実化していた。来年からは四套班子と同格の正国級機関へ昇格し、常務委員会への査察もあるかもしれない。

 中央委員の名簿からは、誰が政治局委員になるのか、常務委員になるのかはわからない。まあ、明日の夕方には判明していることだが、誰が中央委員を外れたかは現時点でもわかる。

 今期で中央委員を外れるであろう方々はやはり名前がなかったので、このまま引退されるのだと思う。しかし、残るだろうと考えていた名前もなかった。李源潮・国家副主席である。

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※熱心に書き込む李源潮さん

 李は17期には人事を握る要職の組織部長を務め、18期は常務委員昇格と見ていたが、政治局委員のまま、単独ではこれといって権限のない国家副主席となった。

 国家副主席は国家主席が不在時に職権を代行したり、国家主席が死亡した際に国家主席に昇格する規定があるが、ご存知の通り習近平は元気だった。

 かつて胡錦濤が1999年のコソボ紛争でNATO軍の空爆で中国大使館が誤爆された際に、中国政府を代表して非難する、といった見せ場もなく、習近平の名代として海外首脳のお葬式に送り込まれていた印象しかない。

 テストで「李源潮はこの5年間何をしていたか、わかる範囲で書きなさい」などという設問があったら、「通夜に出ていた」としか書けない。

 ああ、今調べたら朝鮮戦争休戦60周年で、朝鮮を訪問していたらしい。でも、次に訪朝したのは劉雲山だった。名代としても働けていない。

 その李源潮が中央委員を外れたことで、メインストリームのお仕事につく可能性は無くなった。これも明報が推測していたように、政協のヒラ副主席辺りでフィニッシュだろう。ヒラの中央委員連続4期を務めた王兆国さんにも劣らぬ扱いである。

 中央紀律検査委の機能が強化された18期、組織部長はそのサポートに回っている。人事情報を握っているのだから、摘発もやりやすい。

 十八大前には、前任の賀国強よろしく、組織部長から中央紀律委書記、そして常務委員に昇格するものだと単純に考えていた。組織部長からの常務委員率は高く、十八大時点で62歳ならもうワンランクアップがあると考えるのは、李源潮本人だけではないだろう。李が歩むと見ていた道を、後任の趙が歩んでいるのだ。明暗どころの話ではない。

 まあ、李は周永康並に子飼いの部下の首を飛ばされまくり、首の皮一枚繋がっているような状態なので、逮捕されないだけありがたい。ありがたき幸せとお礼を言うレベルなのだ。

 李にも、王岐山にも言えることだが、中央委員ではなくなっても、党や政府の職に就けないわけではない。

 第18期はヒラ党員の周小川が人民銀行総裁に留任し、王家瑞が中央対外連絡部長を続投した。いずれも副国級の政協副主席を兼任してである。

 ゲンメイおじさんの唐家璇だって、中央委員を外れて10年経つが、呼んでもないのに日中関係の役職を持っているし、上海市長だった徐匡迪は京津冀(北京、天津、河北一体開発)建設に参加している。もう80歳だが、能力を買われたのだろう。

 メインストリームの政府職でヒラ党員は厳しそうだが、たとえば解放軍トップの中央軍事委員会主席は、鄧小平、江沢民が中央委員を退いた後も務めている。中央委員から退いたといっても、完全引退を意味するわけではないことは強調しておきたい。

 さて、気になるところがあったので、考えてみたい。1950年5月生まれの楊潔チ・国務委員(中央委員)、孫春蘭・統一戦線部長(政治局委員)は中央委員を確保し、同じく1950年生まれで誕生月が11月の李源潮は中央委員から外れた。

 これまで68歳以上の政治局常務委員は再任されず、67歳以下のみが留任する、いわゆる「七上八下」の内規があるものと信じられていた。私は政治局委員も同じだと考えていた。そして、65歳を超えると即上がりポストに送られる閣僚とは異なり、68歳を超えても任期中なら辞めさせられないさすが殿上人だと理解していたのだ。

 しかし今回は同じ年齢でも明暗が分かれた。李が習近平に忠誠を誓う人間ではなかったのか、あるいは単に使えないヤツだったのかはわからないが、李の中央委員退任は、年齢による画一的な線引きはやめたことを意味する。

 生まれた瞬間に1歳となり、元旦か旧正月に1歳加える数え年方式なのでなら、3人とも68歳になる。しかし、李瑞環と曽慶紅という、党大会の時点で当落線上にいた有力なおじさんたちは、いずれも誕生日が党大会より前に来ており、2人とも満で数えて68歳を超えていた。

 なので数え方は周年になる。これまで私もどちらの計算方法なのかはっきりとさせていなかったので、ここではっきりさせておく。

 ということは、5月生まれの楊と孫は満67歳、11月生まれの李は66歳ということになる。結構幅を持たせて来たなという印象を受けた。

==参考消息==
党大会直前恒例の大物失脚法則発動か(2016年06月29日)
「核心」に近いかそうでないかの明と暗(2016年07月05日)
沈躍躍摘発なら李源潮まで秒読み(2016年08月10日)
ラベル:十九大
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2017年10月21日

朝鮮労働党からの祝電も比較してみた

 第19回党大会(十九大)で江沢民以下、常務委員経験者の序列が下がったことは全く話題になっていないが、朝鮮労働党の扱いが下がったことは覚えておいていい。

 18日の外交部定例記者会見では、朝鮮が十九大開催に祝電を送ったことをどう評価するかとの質問があった。報道官は「多くの外国の政党、政治組織や政治家からの祝電を受けた。その中に朝鮮労働党も含まれている」と回答を避けた。

 党大会には各国の政党や政治家個人、シンクタンクなどが祝電を送る。日本からは自由党が祝電を送っている。共産党が政権を握っている国家からの祝電は、他とは別に紹介される。

 十八大までは朝鮮、ベトナム、キューバ、ラオスの順番で紹介されていたのが、十九大ではベトナム、ラオス、キューバ、朝鮮となった。ラオスの上昇、もしくはキューバの下降についての解説はどなたかにお任せするとして、朝鮮は4党の最後方に急落下降している。

 私は朝鮮語を一文字も解さないので、中国語に翻訳されたものをベースとする。ネットでは十六大までしかさかのぼれなかった。

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※十六大から十九大の祝電比較

 この対応をされれば、中国が順番を下げるのも無理はないと思う。まず文字数が圧倒的に少ない。文字数が減れば、形式通りの内容になってしまう。

 これまでは当時の総書記たちの名前や、彼らが打ち出した重要なスローガンに言及していた。なにより、「伝統的な中朝両国の友誼」や「兄弟である中国人民」といった表現があった。十九大の祝電にはそれらが全くない。中身のない祝電だ。

 しかし、先月アモイで開かれたBRICS会議当日、朝鮮は核実験を行ない習近平の顔に泥を塗った。今回も祝電ではなくミサイルを飛ばしてもおかしくなかったのだが、内容はともかくちゃんと祝電を送ってきている。日和った理由は中国の朝鮮政策がこの1ヶ月で変わりつつあるからなのだろうか。

 なお、昨年、中国から朝鮮、ベトナム、キューバ、ラオスの共産党党首へ送った祝電を比較したのだが、他の3国と比べて朝鮮への祝電は非常に寒々しい内容だった。塩対応は朝鮮だけではないことだけは記しておく。

==参考消息==
http://www.fmprc.gov.cn/ce/cgrj/chn/zt/yjddsld/t132967.htm
http://cpc.people.com.cn/GB/104019/104115/6381181.html
http://news.xinhuanet.com/18cpcnc/2012-11/08/c_113642593.htm
http://news.xinhuanet.com/world/2017-10/18/c_1121822787.htm
習近平さんの祝電を比較してみました(2016年05月11日)
ラベル:十九大 中朝
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